酒仙の会の主張

 

世界の各国はそれぞれ伝統に培われた酒をもち、それを誇りとしている。

固有の料理とともに、伝統ある酒は民族の食文化の精華である。

我が日本においては、古来、米より醸した独自の酒、「日本酒」が伝統的食文化として花開いている。

その原料米の育種、酵母の改良、醸造技術と製品は、殆ど完成品の域に達していると称しても過言ではない。これこそが、我々が世界に誇りうる「日本酒」である。しかるに、第二次世界大戦の不幸は日本酒にも及んだ。食用にもこと足りぬ米は「日本酒」用にはなり得ず、あらゆる技術を用いて「日本酒もどき」が生産され、奨励された。

宝飾暖衣の現在、この忌まわしい亡霊は科学技術の衣を纏って未だこの市場を支配している。


我々は伝統ある本物の「日本酒」の復活を求める。

我々の求める「日本酒」は、玄米を精白した米と米麹、水に酵母を作用させ、熟練した杜氏、蔵人が精魂こめて作り出す芸術品と言ってよい。 

香味を引き出し、変質を防ぐため、これに若干の醸造アルコールを添加した所謂「本醸造酒」も、現状では「日本酒」として認めざるを得ないが、上槽前後を問わず、米以外に由来する酸味料、甘味料、化学調味料はもとより、米糠の加工によって得られる物質の添加や、大量のアルコールの添加によって製成されたものは、もはや「日本酒」ではないと主張する。

もとより、この種のアルコール飲料が未だに大量に生産され、大きな需要層をもつ現実を無視することはできない。しかしながら、これらの需要層の多くは、日本酒の実態の知識に乏しく、添加物の入っている酒を「日本酒」と信じて飲んでいるのが実状である。
我々は、草の根の運動を通じ、真正の「日本酒」を広く知らしめて、その復興に寄与しようとするものである。(1992年9月)


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